真の機能性と美を兼ね備えたスウェーデン斧の名品­
「グレンスフォシュ・ブルーク」

グレンスフォシュ・ブルークは、100年以上に渡り、手作業による斧の鍛造を続けてきました。
どの斧も品質を重視し、用途に合わせて機能を果たせるように開発されています。
今後、少なくとも100年先までこのような方法で斧を作り続けること、それがグレンスフォシュのビジョンです。

Gränsfors Bruk

歴史と伝統が、今なお自然な形で残っている場所があります。
ヘルシングランドの北部にあるこの小さな村は、蛇行する川沿いにしっかりと根を下ろしています。
村へと続く道に沿って、馬や羊が草を食む牧草地が広がり、そこには家や納屋が点在しています。
何百年もの間、この村では産業と工芸文化が繁栄し、かつては製粉所、タイル張りのストーブ製造業者、ビール醸造所、製材所、鍛冶屋など、
多くの専門業者が川沿いで事業を営んでいました。
今でも2つの伝統産業が操業を続けています。それがグレンスフォシュ・ブルーク社とグレンスフォシュ陶器工場です。
グレンスフォシュは、その歴史が村の今に息づいている、活気あふれるところです。

長い歴史を見続け、伝統と職人の鍛造技術が光る斧

人間と斧との長い歴史

斧は、人間が最も古くから使い続けてきた道具の一つです。最古の斧は手斧、手クサビと呼ばれるもので、柄がついておらず、160万年前にはホモエルガスターがこれを使用していました。
以来、何千年もの時を経てその形や材質を変えつつ、人類史において常に不可欠な道具であり続けてきました。
火をおこすための薪を集める、家を建てる、敵から身を守るといった多岐に渡る用途に、斧が役立てられてきたのです。

産業革命前、斧は数多くの小さな鍛冶屋で製造されていました。
斧の形や構造は、その機能、使用者の要求に応じて決められ、また鍛冶職人の技術も大いに関係していました。19世紀半ばまで、斧は自給農民社会での小規模な作業に使われていました。

産業革命により大量生産品となる

19世紀半ばから盛んになった森林伐採は、斧に対する新たな需要を生み出しました。林産会社や林業従事者など、新たな利用者が斧を求めるようになり、斧の生産事業への商業的関心が高まっていきます。
斧は製造工場で集中的に作られるようになり、生産の合理化と大量生産によって製造コストが削減されました。その一方で残念なことに、しばしば品質を犠牲にして斧の形や素材が変えられました。斧は規格化され、大量生産される製品となっていったのです。

業界の要求を満たす斧の製造に大いに力を注ぐようになり、どのモデルの斧も寸分の違いもなく同じ形に作られるようになりました。職人の手で鍛錬された跡を隠そうと、表面に艶出しを施し、部品を磨き塗装するようになり、色鮮やかで目を引くブランドが標準となっていきました。

伝統的な鍛治職人の技術を継承

しかし今日において、斧の役割はある意味昔に戻ったとも言えます。かつての役割は伐採機械やチェーンソーが担い、今はアウトドアや暖炉・薪ストーブ用の薪割りなどに使われています。
鍛冶職人が精魂込めて鍛造した高品質の斧には、画一的な仕上げは不要であり、手作業の痕跡を隠す必要もありません。刃先を研ぐ以外、斧頭の研磨やならしは行っていません。塗装や艶出しも不要です。グレンスフォシュ斧の柄には伝統的な木製のクサビを、付属の革製ケースには植物タンニンでなめしたヌメ革を使用しています。
職人技術に基づいた伝統的な製造方法で作られる斧は、往々にして忘れ去られがちな古来の知識に基づく技術と形状、そして機能が、現代の薪づくりやキャンプなど小規模作業に適した形で活かされています。

4つの基本テーマに基づいて作られるグレンスフォシュの斧

  1. 1本の斧は、それを鍛錬し、鋭く研ぎ、柄を付ける職人の技術の総和とも言うべきものです。
    グレンスフォシュの斧は1本1本職人の手で作られており、そのプロの技は大いなる尊敬と賞賛に値します。
    彼らの存在なしでは、グレンスフォシュ・ブルークは成り立ちません。
  2. 賢明な生産とは、より少ない資源で、より高い品質と寿命をもたらすような生産の仕方です。
    製品が長持ちすれば、天然資源の消費を抑制し、廃棄物の量を減らすことができます。
  3. 私たちには「総合的な品質」に対する責任があります。
    作業環境、自社製品への責任、環境への配慮はすべてその一部です。また思いやり、倫理観、美しさも同様です。
  4. 製品に関する深い知識は、製品の価値と寿命を高めます。
    グレンスフォシュはその知識をご利用いただく皆さんと共有したいと考えています。
    製品に付属している「斧の本」はその手段のひとつです。
Gransfors Bruk – Hand forged axes since 1902

環境に配慮した総合的な責任

どんな製品も、それを生産するのに天然資源を必要とします。どの資源を、何のために使うのかによって、さまざまな責任が生まれます。
グレンスフォシュは自社製品の機能と品質のみならず、環境に対して、また製品の作り手に対して、未来を見据えた総合的な責任も担っているのです。

斧の製造において満たすべき3つの基準

  • 使用される分野で最高の機能を果たす斧を作ります。
  • 天然資源の使用を最小限にして斧を作ります。
  • 関係する人々に敬意を持って斧を作ります。

歴史を語る斧

グレンスフォシュの斧は、長く受け継がれてきた知識に基づき、今日もなお、昔ながらの鍛造技法に忠実に従い鍛造されている歴史的な斧です。これらの斧は、7世紀から13世紀にかけて、主にスウェーデンなどの北欧諸国で発達した伝統的な斧の鍛造技術を踏襲して製造されていました。
斧の製造では、その工程を重視し、長きに渡り受け継がれてきた鍛造法を大切に守り、さらに発展させています。また、伝統的な製造方法への敬意と未来の可能性も秘めています。

満足いくものだけに施す刻印は自信の証

グレンスフォシュの斧は、熟練職人の手によって作られます。
­­生産工程での分業はなく、それぞれの職人が1本の斧を最初から最後まで仕上げていきます。
満足のいくものだけに自らのイニシャルを刻む斧頭。
グレンスフォシュの斧を一目見て、手にした瞬間の“違い”こそが、手作りの工芸品であることの何よりの証しです。

グレンスフォシュの生産体制

グレンスフォシュの製品は、高度な技を持つ職人により手作業で鍛造されるため、プレス成形のように大量生産することはできません。世界的な需要の高まりを受け、限りある生産数の中から各国への供給バランスの調整を行っています。そのため、日本では特にキンドリングアックス(片手斧)の一部に関して、お届けまでに年単位でお時間をいただく場合があります。
現在、グレンスフォシュでは生産体制の強化に努めていますが、品質維持とブランドの後世への健やかな継承のため、この状況を何卒ご理解くださいますようお願いします。

製造工程

鍛造

グレンスフォシュ斧には炭素含有量の高い特殊合金の再利用鋼が使われています。約1200℃のかまどで熱した鋼を鍛冶職人がタイミングを見極めながら取り出し、大型のプレス機で加工を始めます。
プレス機は、1分間に80回、1打に約180トンもの力がかかります。高温の鋼が職人の手によって素早く巧みに処理され、四角い鋼片が徐々に斧頭へと変化していきます。
鋼は強い力で何度も叩くことで、素材の構造が変化するため、1回のみ、または数回打って作られた斧よりも薄く、刃先も広く鋭利なものになります。

研磨、硬化、焼戻し

鍛造後、刃先のみを研磨します。研磨後、刃先を820℃まで加熱し、水で素早く冷まします。急速に冷やすと鋼材は硬度が増しますが、ややもろくなるため、鋼の焼戻しを行います。
焼戻し工程では、再び約200℃まで加熱し、鍛冶作業や硬化の工程で生じる鋼材のひずみを除去します。鋼の硬度は主として炭素量で決まりますが、焼戻しの温度にも影響されます。

タンブリングと仕上げ

斧頭は、セラミックの小さな粒と共に回転ドラムに入れて磨きます。このタンブリング工程を経ることで斧の表面がサビにくくなります。鋼の硬度を検査し、硬すぎず柔らかすぎない硬度になっていることを確かめます。次に斧刃を検査するため刃縁の角を叩き、鋼に亀裂が入らないことを確認します。
この一連の工程により、適切な鍛造、硬化、焼戻し作業が確実に実施され、グレンスフォシュが誇る品質を備えた斧であることが保証されます。最後に斧を研ぎ、さらに磨きをかけて鋭利な刃先に仕上げます。

斧の研磨処理後、斧頭に撥水性の防サビ油をすり込みます。斧頭が少し乾いたら、いよいよ柄の取り付けです。油圧式プレスで柄を斧頭に押し入れ、木製クサビで固定します。

材料

斧頭は再利用可能なスウェーデン鋼

鋼鉄はグレンスフォシュ製品の要です。鉄は地上で4番目に多く存在する元素で、純鉄形態では比較的柔らかく可鍛性があります。鋼鉄は鉄を主成分とし、炭素、ケイ素、マンガンなどの他の元素を少量含む合金(金属混合物)です。この合金は、溶かした鉄に金属元素と非金属元素を混ぜて作られます。
合金を作るための「レシピ」を変えれば、最終製品に必要な硬さ、耐久性、靭性などに応じてさまざまな種類の鋼を作ることができます。炭素が結合剤の役割を果たしており、炭素の含有量によって鋼の性質が決まります。

鉄をベースとする鋼鉄は、原理上は無限に再利用することができるため、19世紀以降、鉄くず中心の製鉄所が数多く設立されてきました。こうした製鉄所では、鉄を溶かして新たな鋼製品にする技術が使われています。つまり遠い将来、手持ちの斧が寿命を迎えたときも、それは再利用され、別の製品へと生まれ変わることになるのです。

生物分解可能な木製柄

柄の素材は、軽量ながら強靭で長持ちするヒッコリー材とブナ材です。高温の亜麻仁油に浸すことで耐久性を強化し、防汚・防水加工として蜜蝋で表面を処理しています。人間工学に基づいたデザインは、腕をまっすぐ伸ばして柄を握ったときも、しっかりとした快適なグリップであることに気づくはずです。

植物タンニンでなめした革製ケース

ケースは植物タンニンでなめした革製です(ヌメ革)。スウェーデン産のさまざまな樹木の樹皮、花や根などの天然原料を用いて革をなめしています。なめすことで、細菌による分解を防ぎ、革本来の性質を保ち、強化することができます。なめし革は丈夫でしなやかに曲がり、水の浸透を防ぎます。

構成部品

グレンスフォシュの薪割り用斧の特徴は、小型の鉄製クサビです(一部製品を除く)。
薪割り用斧の使用の際には大きな力が加わりますが、斧頭が緩まないように、この鉄製クサビで柄にしっかりと固定しているため、
斧頭が柄から外れることはありません。